森福都『肉屏風の密室』

肉屏風の密室

肉屏風の密室

 巡按御史シリーズの二冊め。前作『十八面の骰子』から続く、連作短編集です。表紙のイラストが時代的にどうなんでしょう、という疑問がありますが、ちょっとネットで調べたくらいでは分からなかったので、棚上げします。

感想

 各話のタイトルは、以下のような形で統一されてます。目次がきれいで良いですね。

  • 黄鶏帖の名跡
  • 蓬草塩の塑像
  • 肉屏風の密室
  • 猩々緋の母斑
  • 楽遊原の剛風

 全体の感想としては、小出しにされる主人公・趙希舜の過去が上手に話ごとのテーマと絡んでいて、惹きつけられます。明かされる順序もひとつひとつのストーリーを盛り上げつつ、全体としての流れを作っているので、感情移入がしやすいです。


 彼女の次回刊行本は、雑誌「ミステリーズ!」で連載している<ご近所美術館>が単行本化したものになると思います。久々の現代ものだと思うのですが、期待しつつ待ちましょう。
 ちなみに、というか、森福都のファンです。

中村光『聖☆おにいさん』1・2巻

聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)

聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)

聖☆おにいさん (2) (モーニングKC)

聖☆おにいさん (2) (モーニングKC)

 最近、話題になっていると思うのですが、個人的にも気になっていたので購入。

感想

日本の立川で、ブッダとイエスが共同生活する様子を描いた漫画。怒ったり、悟りをひらきそうになったら後光がさすブッダと、我慢の限界を超えると聖痕が開いたり、嬉しいことがあると水や石をワインやパンに変えてしまう奇跡を行ったりするイエスがおもしろい。
1巻5話の話が、すごい泣けました。いや、あれは猫好きな人は泣くよ。

中村融・山岸真編『20世紀SF(3)(4)』河出文庫

 20世紀の英語圏SFを年代別に収録しているシリーズ。(裏表紙照会文を参考にしました)
 とりあえず、全体としての感想と収録作品タイトル・作家名だけ書いておきます。
 個別の感想を簡潔に述べて行きたいのですが、それはまた今度。

中村融山岸真編『20世紀SF(3)1960年代 砂の檻』河出文庫

20世紀SF〈3〉1960年代・砂の檻 (河出文庫)

20世紀SF〈3〉1960年代・砂の檻 (河出文庫)

 (1)と(2)が結構さくさく読み進められたのに比べると、(3)は読み終えるまでかなり時間がかかりました。読む時間がなかったということも理由としてはあげられるのですが、ニュー・ウェーブの作品群ということでくせのある作品が多かったのかな、とも思います。

感想

中村融山岸真編『20世紀SF(4)1970年代 接続された女』 河出文庫

20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女 (河出文庫)

20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女 (河出文庫)

 (3)と連続して読んだのですが、さくさく読めて気持ちよかったです。先に解説をちょっと読んで前知識を持って読んだところが、いつもと違う点でしょうか。

感想

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荒川弘『鋼の錬金術師』20巻

鋼の錬金術師 20 (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 20 (ガンガンコミックス)

 気が付けばもう20巻にもなっています。そろそろ、終わりへのロンドが見えてきたような気もしますが、はてさて。
手元に19巻がなくて、あらすじはどうにもこうにも説明できないので略。同じ理由で、大局的な感想も書けないので、あしからず。

感想

 エンヴィーの正体見たり! 何かに似ている気がしますが、例えていうなら特撮怪獣やクトゥルフの簡易縮小版みたいな感じでしょうか。もうちょっと似てる表現も思いついたけれど、ちょっと気持ち悪いのでやめておきます。
 この巻では、いままでエドたちが渡り歩いてきた人々が一挙に出てくることで、物語が動いているという感じがして良いですね。エドとアルの父親やロゼ、イズミ、アームストロング家の人々、大佐周辺、シン国の人間、スカー一味がそれぞれ個別に動いていながらも、うまいこと繋がってますね。次巻が待ち遠しいです。
残念なことと言えば、おまけが少なかったことでしょうか。1ページしかなかった。

ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』河出書房

やっと、読み終わった。というのは、本の感想じゃないな。発売日くらいから読んでるんだけど、なかなか読み進まなかったのです。

感想

放浪好きな主人公のサルが、自分よりももっとすごい、一所にじっとしていられないディーンと知り合って、そいつと一緒にだったり、会いに行くためだったり、途中合流したりしながら、アメリカ大陸を東へ西へ行き来したり、メキシコくんだりまで野を越え山を越え出かけて行ったりする話です。
道程は、歩いたり、バスに乗ったり、車に乗ったり、ヒッチハイクしたり、色々。


この話の面白さとか醍醐味は、ストーリーの概要を伝えるだけではなかなかわからないかも。
面白いのは文章で、言葉の意味するところが露骨で表現もそれなりに直接的なわりに、清潔に仕上げられているような感じがします。
清楚とか綺麗じゃなくて、語感やイメージ的に清潔、というのか、すっきりしています。
だって、同じTシャツを何日も着てるっていう描写があるにも関わらず、何故かうえっ、とならない。弁解のために言うなら、それには理由があります。着替えが無いとか以外の、もう少しちゃんとしてるけど、馬鹿らしい理由が。
そんな理由とかに表れているものも面白い。


自分に関して言うなら、きっと高校1年生くらいの時期じゃ途中で読まなくなってたかも、みたいな、エキサイティングでもわかりやすい目的があるのでもない本ですね。
大人にならないと読めない。
クンデラをね、高校のときに読もうとしたんだけど、なぜか途中で読まなくなったので、この全集でリベンジすることになります。それが楽しみ。しかし、クンデラへたどり着くには楽園への道を歩まねばならんのです。

ヒュー・ロフティング 『ドリトル先生航海記』『ドリトル先生のサーカス』『ドリトル先生の動物園』

ドリトル先生航海記 (岩波少年文庫 (022))

ドリトル先生航海記 (岩波少年文庫 (022))

ドリトル先生のサーカス (岩波少年文庫 (024))

ドリトル先生のサーカス (岩波少年文庫 (024))

ドリトル先生の動物園 (岩波少年文庫 (025))

ドリトル先生の動物園 (岩波少年文庫 (025))

新谷かおる『エリア88』1‐3巻、『砂の薔薇』1-8巻

エリア88 (1) (スコラ漫画文庫シリーズ)

エリア88 (1) (スコラ漫画文庫シリーズ)

 ちょっと巻数が多いので、画像はピックアップしたもの。エリア88の方は、スコラの画像はなかったのでご容赦の程。砂の薔薇は1巻の画像がなかったので2巻。

感想/砂の薔薇

 アメリカの対テロサービスの民間会社CATに所属する女性社員の物語。主人公のマリー・ローズバンクは過去にテロで夫と子供を失い、その復讐のためにCATにはいる。作中で何度も書かれるが、CATは軍ではない。軍ではないものの上層部にペンタゴンが絡んでいるらしくて、それ絡みの仕事も多い。
 マリーの指揮するディヴィジョンMの隊員達はとっても魅力的なのですが、個人的に好みなのは、ヘルガ、デラ、アイリーンあたり。ヘルガはドイツ女での人なのだが、もうたまらん。マリーの指揮に対して、ヤーで答えたりしてるのが良いですね。

追記(ネタバレあり)/08年9月20日土曜

 先日、やっと8巻を手に入れまして、砂の薔薇は全て読み終えました。マリーが当初の目的を忘れたわけではなく、対テロの世界に実際に身を置くことで考えを変えていったことが、無理なく描かれていて良かったです。
 ディヴィジョンMが日本で行動する話には、平和ボケが悪いわけじゃないけど、作中で主人公達が面している厄介ごとを扱うにおいては問題があるのよ、という具合に、彼女達の特殊性や能力などをまた違った形で表すものとして、うまくストーリーに組み込めていると思います。
 エリア88の結末もそうでしたが、作者は酷い状況というのを酷く描きすぎず、程よく描いています。作者の好みかな。ひとつひとつのストーリーを見たときは、それが丁度良いのですが、一作品の完結としては、やや物足りなく感じます。ファン心理としては、グリフォンとの絡みをもう少し描いて欲しかった。作者が個人的にまだ話を描いたこともあるらしいので、『砂の薔薇』としては完結だけど、作者的には描ききってないぜ!みたいなものもあるのでしょうか。にしても、そっちも読みたいですね。

感想/エリア88

 親友の神崎にだまされて、内戦激しいアスランの傭兵部隊で働くことになった風間シン。エリア88と名づけられた基地を出るには、莫大な違約金を払うか契約期間満了まで生き残るしかない。シンは日本にいる恋人・涼子の姿を描きながら、死に物狂いで戦闘機の操縦桿を握る……。


一回病院の待合室で全部読んだから知ってるんだけど、あんまり好きになったので、文庫版で揃えはじめてみた。
砂の薔薇の女性達も魅力的だが、こっちのヤローどもも哀愁があって良い男ばかり。
フーバーかミッキーあたりがいいヤツだと思っているんだが、グレッグもグレッグで良いヤツです。少しうーんなところもあるけど、それでも好きな作品です。